「ジャングルクルーズってただの動物見るやつでしょ?」
そう思っているなら、それはかなりもったいないです。
このアトラクションには、開園当初から40年以上語り継がれてきた裏話、誕生にまつわる笑えるハプニング、知る人ぞ知るBGS(バックグラウンドストーリー)が山のように詰まっています。
今回はジャングルクルーズを徹底解剖。知ってから乗ると、あの10分間がまったく違う体験になります。
そもそもジャングルクルーズとは?基本のBGS
まず基本のバックグラウンドストーリーから確認しましょう。
ゲストが参加するのは、「ジャングルクルーズ・カンパニー」が主催するジャングル探検ツアーです。ジャングルの動植物と文化の調査・保護・広報を目的として設立されたこの会社が、個性豊かな船長(スキッパー)たちを案内役にして催行している探検ツアーに、ゲストは参加者として乗り込みます。
舞台となるジャングルは、アマゾン川(南米)、ナイル川(アフリカ)、イラワジ川(ミャンマー)という世界の3大ジャングルを再現したもの。この広大な熱帯地域を、10分間で一気に旅してしまうという設定です。
ただのジェットボートではなく、あくまでも「世界のジャングルを調査する探検船」に乗り込んでいる——この意識を持って乗るだけで、見える景色がまるで変わります。
誕生秘話|笑えるほどトラブルだらけだった制作現場
ジャングルクルーズは、ウォルト・ディズニー本人が深く関わったアトラクションです。ディズニーランドの建設が始まった1950年代初頭、ほとんど砂漠とオレンジ畑だったカリフォルニアの土地に「ジャングルを作る」という計画がスタートしました。
しかしその制作現場は、笑えるほどトラブルの連続でした。
木を全部なぎ倒してしまった
ジャングルを作るには、まず木を増やさなければなりません。もともと生えていた木はできる限り残すため、残す木に「緑」、倒す木に「赤」のマークをつける作業が行われました。ところが、ブルドーザーの運転手が色の識別が苦手で、マークを区別できずに残すべき木を全部なぎ倒してしまったのです。
結果、一から木を植え直すことになりました。
本物の動物を置こうとした
動物好きだったウォルトは当初、「本物の動物をジャングルクルーズに置きたい」と考えていました。しかし動物は夜行性でパフォーマンスしてくれるわけでもなく、当時の技術では衛生管理も難しい。すぐに断念することになります。
そこで生まれたのが、ディズニー独自の技術「オーディオアニマトロニクス」です。リアルに動くロボット動物を作ることになったのですが、当時の技術では自立できるロボットを作ることができなかった。そこで首だけのキリンや、体の半分だけのカバを作り、残りの部分を木や水の中に隠すという苦肉の策が取られました。
水が緑色な理由
ジャングルクルーズの川の水が緑色なのを不思議に思ったことはありますか?実はあの緑色には理由があります。カバなどの動物を動かすための機械装置を水中に沈めているのですが、その装置を見えなくするために水を緑色に着色しているのです。
神秘的な雰囲気を演出しているように見えて、実は機械を隠すための実用的な理由があったというのが面白いですね。
リピーターが少なすぎた
苦労の末に完成したジャングルクルーズは、オープン当初こそ大盛況でした。しかし問題が発生します。「一回乗ったら満足してしまう人が多く、リピーターがなかなか来ない」という事態です。
「何度も乗りたくなるアトラクションを目指していたのに」とウォルトは頭を抱えました。そこで生まれたのが、スキッパー(船長)によるユーモアたっぷりのトークという解決策です。毎回違うジョークが飛び出すことで、何度乗っても新鮮な体験にする——これがジャングルクルーズの「スキッパートーク」の原点です。
サファリ・トレーディング・カンパニーの知られざる歴史
ジャングルクルーズを運営しているのは「ジャングルクルーズ・カンパニー」ですが、その前身となる会社が存在します。それが「サファリ・トレーディング・カンパニー」です。
この会社は1922年に船を使った貿易会社として設立されました。その後、鉄道による運搬も手がけるようになり事業は好調。しかし時代の流れとともに貿易の需要が減少し、経営危機に陥ります。
そこで会社が打ち出した新事業が、船を使った「ジャングル探検ツアー」と、鉄道を使った「ウエスタンリバー鉄道」の2つでした。
つまり、ジャングルクルーズとウエスタンリバー鉄道が同じ建物を共有しているのは、同じ会社が運営する2つの事業だからというわけです。ただの偶然ではなく、ちゃんとしたバックグラウンドストーリーに基づいた設計なのです。
待機列のエリアをよく観察すると、この貿易会社時代の名残を感じさせるプロップス(小道具)が散りばめられています。壁に書かれた「アフリカ、インド、セイロン、ペルシアからの新商品入荷」という文字も、その一つです。
13隻の船に隠された秘密
ジャングルクルーズには全部で13隻のボートが存在します。そしてこの13隻すべてに、ある共通のルールが適用されています。それが「川の名前+女性の名前」という命名法則です。
13隻の名前と所有者
アマゾン・アニー(ライフガードの船)、イラワジ・アーマ(探検家の船)、ガンジス・ガーティー(釣り師の船)、クワンゴ・ケイト(写真家の船)、コンゴ・コニー(探検家の船)、サンクル・サディ(収集家の船)、セネガル・サル(探検家の船)、ザンベジ・ゼルダ(生物学者の船)、ナイル・ネリー(探検家の船)、ボルタ・ヴァル(探検家の船)、ルッシュル・ルビー(トレジャーハンターの船)、ワンバ・ワンダ(医者の船)、そしてオリノコ・アイダ(画家の船)。
各船には所有者の職業に合わせた装飾品が置かれています。写真家の船「クワンゴ・ケイト」には写真が飾られていたり、釣り師の船には釣り道具があったり。乗船した際はぜひ船内の装飾にも注目してみてください。
なぜ川と女性の名前を組み合わせるのか
英語では船のことを「She(彼女)」と表現する文化があります。船を女性に例える伝統は古くからあり、ジャングルクルーズのボートもその文化に倣っています。川の名前と女性の名前の頭文字を揃えることで、覚えやすく美しい名前になっています。
唯一の「謎のボート」オリノコ・アイダ
13隻の中で特別な存在として知られているのが「オリノコ・アイダ(Orinoco Idae)」号です。他の12隻はすべて川の名前と女性の名前の頭文字が同じアルファベットで揃っているのに、このボートだけ「O」と「I」と頭文字が異なります。さらに他の船が全て大文字表記なのに対し、このボートだけ小文字が混じっています。
なぜなのか、その理由は現在も公式には明かされていません。ディズニーファンの間では「乗れたらラッキーなレアなボート」として注目されています。
開園当初から走り続けている唯一のボート
もう一つのレアなボートが「ボルタ・ヴァル(VOLTA VAL)」号です。赤白のストライプ屋根が特徴で、1983年の東京ディズニーランド開園当初から今も現役で走り続けている唯一のボートです。35年以上走り続けているボートに乗れたら、それだけで特別な体験かもしれません。
スキッパートークの世界
ジャングルクルーズ最大の魅力の一つが、船長(スキッパー)によるトークです。スキッパーはジャングルの案内をしながら、状況に合わせたジョークを次々と繰り出します。
有名なスキッパートークの例
シマウマをライオンが捕食している場面では、「シマウマさんはライオンたちからマッサージを受けていますよ〜」という定番のジョークが飛び出します。
木によじ登ってサイから逃げている探検家の場面では、「実は昨日の私のお客さんなんです。お守りを忘れてあんなことに…。でも大丈夫、今日はお守りを持っているので半分くらいは無事に帰れますよ!」というトークも有名です。
また「生存率は10%です。ちなみに10%は優秀な数値らしい」という台詞も。スキッパーの個性や経験によってトークは変わるため、同じ場面でも毎回違う言い回しで楽しませてくれます。
スキッパーになった理由も設定がある
実はスキッパー自身にもバックグラウンドストーリーがあります。「下船の際に親に忘れられて迷子になり、そのまま成長してスキッパーになった」という設定が公式に語られています。なんとも哀愁漂う経歴ですが、だからこそジャングルを誰よりも知り尽くしているという設定です。
待機列に隠された小ネタ・プロップス
ジャングルクルーズはアトラクションに乗る前から楽しめる仕掛けが満載です。
曜日ごとに変わるランチメニュー
待機列(Qライン)のエリアには、スキッパーたちが実際に食べているという設定の「ランチメニュー」が掲示されています。ジャングルのサバイバル感をリアルに表現したユニークすぎるメニューが曜日ごとに変わるため、何日か通うとすべてのメニューを見ることができます。
船長同士の連絡ノート
2014年のリニューアル後、待機列ではスキッパーたちが書き合っている連絡ノートを見ることができます。リニューアル前はボートの売上記録が書かれたノートでしたが、現在はスキッパー同士のリアルなやりとりが読めます。じっくり読むとクスっと笑えるやりとりが記されています。
地図に隠れた秘密
Qラインの壁には、これから探検するジャングルの大きな地図が飾られています。地図には動物の絵や川の流れが描かれていますが、神殿の場所だけは描かれていません。探検の途中で偶然迷い込んでしまうという設定を、地図にまで反映させているのです。また、この地図の中に隠れミッキーが隠されているので、ぜひ探してみてください。
隠れミッキーの場所
ジャングルクルーズには複数の隠れミッキーが確認されています。
まずアトラクション入口の建物の左の柱にシミの形で隠れミッキーが存在します。次にQラインの壁にある地図の右下にも隠れミッキーが描かれています。方角を示すコンパスのあたりをよく見てみてください。
なお、リニューアル前はアトラクション内のニシキヘビの模様の中にも隠れミッキーがいましたが、リニューアル後は場所が変更されています。
2014年のリニューアルで何が変わったか
東京ディズニーランドのジャングルクルーズは2014年にリニューアルオープンし、「ジャングルクルーズ:ワイルドライフ・エクスペディション」という名称になりました。
最大の変更点はナイトクルーズの追加です。日没後は照明やイルミネーションが演出に加わり、昼間とはまったく違う雰囲気でジャングルを探検できるようになりました。同じアトラクションでも昼と夜で別の体験ができるというのは、リピーターを増やすウォルトの精神を受け継いだ進化といえます。
また入口エリアも一新され、貿易会社時代のプロップスからスキッパーたちの日常を感じる演出へと変化。船長たちの休憩室やオフィスを覗けるようになり、よりキャラクターたちの世界に入り込める構成になっています。
まとめ|ジャングルクルーズは「人」が主役のアトラクション
スペースマウンテンやビッグサンダー・マウンテンとは違い、ジャングルクルーズには絶叫もスリルもありません。それでもこのアトラクションが40年以上愛され続けている理由は、スキッパーという「人」が主役のアトラクションだからです。
- 制作現場はトラブルだらけで、だからこそスキッパートークが生まれた
- 水が緑色なのは機械を隠すためという実用的な理由がある
- 13隻のボートにはそれぞれ所有者がいて、装飾まで異なる
- オリノコ・アイダ号とボルタ・ヴァル号は乗れたらラッキーなレアボート
- 待機列からすでに物語は始まっている
- スキッパー自身にも哀愁あるバックグラウンドストーリーがある
これを知ってから乗ると、スキッパーのトークの一言一言がまったく違って聞こえてきます。
次にジャングルクルーズに乗るときは、ぜひ待機列のプロップスから、ボートの名前、スキッパーのトークまで、すべてに意識を向けてみてください。きっと「もう一回乗りたい!」と思うはずです。



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