- 「海底2万マイルって、ゆっくり動くだけの地味なアトラクションでしょ?」
そう思って乗ったことがない、あるいは一度乗ってそれきりという方も多いかもしれません。
しかし実はこのアトラクション、「タイトルの意味を勘違いしている人がほとんど」「アトランティスが実際に登場する」「ネモ船長は偽名」「ライド中に潜水深度をリアルタイムで確認できる」など、知れば知るほど奥深い設定が山のように詰め込まれています。
今回は海底2万マイルのバックグラウンドストーリー・裏話・隠し演出を完全解説します。
まず「海底2万マイル」というタイトルの意味を解説
多くの方が勘違いしているのが、このタイトルの意味です。「海底2万マイル」と聞くと、「海の深さが2万マイル」だと思う方がとても多いのですが、実はまったく違います。
正しくは、ネモ船長が開発した潜水艦ノーチラス号が「海底を2万マイル旅した」という意味です。2万マイルとは約32,000km。地球をぐるっと約0.8周できる距離を、海底の中を走り続けたということです。
ではゲストが乗る小型潜水艇はどのくらいの深さに潜っているのか?実はその答えはライド中にリアルタイムで確認できます。潜水艇の内部に「深度計」が設置されており、海に潜っていくにつれて数値が変わっていきます。次回乗るときはぜひ深度計に注目してみてください。
原作はSFの父・ジュール・ヴェルヌの小説
海底2万マイルのアトラクションは、1954年制作のディズニー実写映画「海底二万哩」をモチーフにしています。そしてその映画の原作となったのが、フランスの作家ジュール・ガブリエル・ヴェルヌによる同名小説です。
ヴェルヌは「SFの父」とも評される作家で、他にも『地底旅行』(センター・オブ・ジ・アースの原作)、『八十日間世界一周』、『月世界旅行』など、現代のSF作品に多大な影響を与えた作品を次々と生み出しました。
つまり東京ディズニーシーのミステリアスアイランドにある2大アトラクション、「海底2万マイル」と「センター・オブ・ジ・アース」はどちらも同じ作家の小説が原作なのです。ネモ船長という同一人物が両方に登場するのも、このためです。
時代設定は1873年。19世紀後半の科学革命の時代を舞台に、時代を超越した天才科学者ネモ船長の物語が展開されます。
ネモ船長とは何者か?「Nemo」という名前の意味
このアトラクションの主人公であるネモ船長。彼は南太平洋の孤島・ミステリアスアイランドを拠点に日夜研究を続ける謎の天才科学者です。ノーチラス号(大型潜水艦)の設計・建造を行い、海底や地底の探索を通じて「飢餓からの解放」と「人類の発展」を目指しています。
しかし彼については謎が多く、パーク内でも姿を見かけることはほとんどありません。それもそのはず——「ネモ」という名前はラテン語で「誰でもない(Nobody)」を意味する偽名なのです。本名すら明かしたくないほど、人を信じず孤独を好む人物だということが伝わってきます。
ただし、ゲストでも彼の姿を確認できるスポットが一箇所だけあります。待機列(Qライン)のネモ船長の書斎に、貴重な肖像画が飾られています。混雑時にしか書斎前まで案内されないため、「混んでいるときこそラッキー」なレアスポットです。
ミステリアスアイランドはネモ船長の秘密基地
海底2万マイルが存在するミステリアスアイランドというエリア全体が、ネモ船長の秘密研究基地という設定になっています。エリアの地面や壁のあちこちに「N」のマークが刻まれているのを見たことはありますか?あの「N」はすべて「Nemo(ネモ)」の頭文字です。エリア全体がネモ船長の所有物であることを示しているのです。
そしてミステリアスアイランドで働くスタッフは、他のエリアと異なり「キャスト」ではなく「クルー」と呼ばれます。なぜなら彼らはネモ船長の潜水艦や研究施設のクルー(乗組員・研究員)という設定だからです。
さらにクルー同士には独特の挨拶があります。左手を右肩に当てるポーズでネモ船長への敬意を表し、「モビリス」という言葉で挨拶します。返す言葉は「モビリ」。これは「変化をもって変化する(Mobilis in Mobili)」というラテン語から来ており、ネモ船長のモットーでもあります。
クルーに「モビリス」と声をかけてみると「モビリ」と返してくれることがあります。ぜひ試してみてください。
基本のバックグラウンドストーリー
アトラクションの設定を整理しましょう。ゲストは「志願クルー」としてネモ船長から招待されます。目的は、海底深くに眠る「高度な進化を遂げた知的生命体」の調査です。
ネモ船長は、現代人よりはるかに知的で発達した文明が海底奥深くに眠っていると信じており、その実地調査のためにゲストを志願クルーとして招集しました。つまりゲストは観光客ではなく、科学者・研究者として任務に就くという立場でアトラクションに参加するのです。
搭乗するのはネモ船長が開発した小型潜水艇「ネプチューン号」。ネプチューンとはローマ神話の海の神の名前です。この潜水艇はネモ船長が海底探査専用に設計した最新鋭の機体で、Qラインの書斎にはその設計書や説明書が展示されています。
ライド中に何が起きているのか?各エリアを徹底解説
出発〜船の墓場
小型潜水艇に乗り込んだゲストが最初に通り過ぎるのが「船の墓場」と呼ばれるエリアです。海底に無数の難破船が沈んでいるこの場所について、ネモ船長はこう語っています。「ここで多くの船が沈んだのはとても偶然だとは思えない」と。
船を沈める何か巨大な存在が潜んでいるのかもしれない——そんな不安を抱えながら探索は続きます。
クラーケンの岩礁地帯
船の墓場のすぐそばに存在する危険地帯が「クラーケンの岩礁地帯」です。クラーケンとは北欧神話に登場する海の怪物のこと。ネモ船長もこの場所に実際に遭遇したわけではなく、「何らかの巨大な怪物がいると思われる場所」として警戒針路を設定しているのです。
そしてアトラクション内でゲストの乗る潜水艇は、このクラーケンに襲われてしまいます。制御を失った潜水艇はそのまま——。
ルシファー海溝とアトランティスの発見
クラーケンに攻撃されたゲストの潜水艇は、「ルシファーの海溝」へと落下していきます。水深2,000m以上という極めて深い海溝で、ネモ船長はその底から奇妙な光が発せられていることを以前から確認していました。
そして海溝の底にたどり着いたとき、ゲストが目にするのは巨大な遺跡と奇妙な人型の生き物たち。これはネモ船長が探し求めていた伝説のアトランティス文明そのものです。海溝の底から漏れていた光は、アトランティスのものだったのです。
アトランティスは古代ギリシアの哲学者プラトンの著書にも登場する伝説の大陸。プラトンの時代から9,000年前に海に沈んだとされています。コンセプトアートによると、アトランティスの住民たちは地震や火山活動で街が沈む中、ある者は海を渡って新天地へ向かい、ある者は故郷を離れられず海底に残り続けたとされています。つまりゲストが目にするアトランティスの住人たちは、何千年もの間この海底で生き続けてきた人々なのです。
ノーチラス号とネプチューン号の違い
ミステリアスアイランドには2種類の潜水艦が存在します。混同されがちなのでここで整理しましょう。
ノーチラス号(ネモ船長専用の大型潜水艦)
エリア内に停泊している大きな鉄製の潜水艦がノーチラス号です。ネモ船長と彼の部下だけが乗船を許された最高機密の艦で、ゲストが乗ることはできません。艦内では完全な自給自足が可能で、人類の科学を超越した特殊な自家発電で推進力を得ています。艦の後尾部分はボートとして切り離すことができる設計になっており、周囲から泡が出ているのは整備中の証拠です。
ネプチューン号(小型潜水艇)
ゲストが実際に乗り込む小型潜水艇がネプチューン号です。ネモ船長がノーチラス号とは別に設計した海底探査専用の小型機体で、複数台が運用されています。乗り場の上を見上げると、「サブマリン・ホックシステム」と呼ばれる洗濯バサミのような大型アーム機構が潜水艇を掴んで運搬しているのが見えます。レールのない潜水艇を効率よく運搬・入水・引揚するためにネモ船長が考案したシステムで、乗り場でふと上を見上げた人だけが気づける隠し演出です。
待機列(Qライン)の書斎に隠された情報量
海底2万マイルのQラインにはネモ船長の書斎があり、そこには膨大な情報が詰め込まれています。
書斎にはネモ船長がアトランティス文明について調査している資料、ネプチューン号の設計書と説明書、潜水服の装備に関する説明書き、ダイビングスーツの貸出表、そして水中農園(AQUAFARM)の設計図などが展示されています。
水中農園(AQUAFARM)の設定が深すぎる
ミステリアスアイランドの海底には水中農園(AQUAFARM)が設置されており、食料用の海藻が栽培されています。ネモ船長はこの海藻を「飢餓からの解放」を実現するための重要な食料源として研究しており、効率よく収穫するための「海草収穫機」まで開発しています。さらに驚くことに、この海藻はクルーたちの食料だけでなくコスチュームの生地にもなっているのだとか。海藻がユニフォームの素材になっているという設定は、いかにもネモ船長らしい発想です。
ライド中に隠れているニモとアリエル
ディズニーファンに嬉しい隠し要素として、ライド中にニモとアリエルが登場します。
ニモ(映画「ファインディング・ニモ」の主人公の魚)は進行方向左側の座席から見える場所に隠れています。アリエル(映画「リトル・マーメイド」の人魚姫)は右側の席から見える位置に、彫刻とシルエットで2回登場します。どちらも注意しないと見逃してしまうほど小さな演出なので、左右どちらの席に座るかで見られるキャラクターが変わります。
これを知っていると、次に乗るときは意識的に左右を確認したくなりますよね。
プロメテウス火山の「噴火」は本物ではない
ミステリアスアイランドのシンボルであるプロメテウス火山は、1時間に1回程度の頻度で炎を上げます。これは「噴火」と呼ばれていますが、実際にはマグマが噴き出しているわけではなく、「火炎現象」という表現が正しいそうです。
バックグラウンドストーリー上では、ネモ船長がこの火山の地熱エネルギーを研究施設の動力源として活用しているという設定になっています。ヴォルケイニア・レストランも公式の設定では「地熱発電所の食堂」という位置づけであり、美味しい中華料理を提供しながら島全体のエネルギーを賄う発電施設でもあるのです。
センター・オブ・ジ・アースとのつながり
海底2万マイルとセンター・オブ・ジ・アースは、同じネモ船長が登場する作品として世界観を共有しています。ゲストが乗る地底走行車もネモ船長の発明品であり、どちらのアトラクションも「ネモ船長の科学力によって未知の世界を探索する」という共通のテーマを持っています。
センター・オブ・ジ・アースのエレベーター「テラヴェータ」に乗って地下に向かうとき、実は下に向かっているように感じさせているが音や風の錯覚を利用して実際は上に向かっているという有名な仕掛けがあります。これもネモ船長の技術力の演出です。
ミステリアスアイランドを訪れるときは、2つのアトラクションを「別々の体験」ではなく「同じネモ船長の秘密研究基地での、2つの異なる調査任務」として捉えると、エリア全体の見え方がまったく変わります。
まとめ|海底2万マイルは「知っているほど深くなる」アトラクション
海底2万マイルは一見地味に見えて、実は東京ディズニーシーの中でもっとも設定が緻密で奥深いアトラクションのひとつです。
- タイトルは「深さ」ではなく「ノーチラス号が旅した距離」の意味
- 原作はジュール・ヴェルヌの小説で、センター・オブ・ジ・アースと原作者が同じ
- 「ネモ」はラテン語で「誰でもない」を意味する偽名
- ミステリアスアイランド全体がネモ船長の秘密基地で、Nマークがあちこちに隠れている
- クルー同士の挨拶は「モビリス/モビリ」
- ライド中に潜水深度計でリアルタイムの深さが確認できる
- 海溝の底で登場するのは本物のアトランティス文明
- ネプチューン号を運ぶサブマリン・ホックシステムは乗り場の上を見ると確認できる
- ライド中に左右でニモとアリエルが隠れている
- ヴォルケイニア・レストランは地熱発電所の食堂という設定
これを知ってから乗ると、ゆっくりと静かに進む潜水艇の一コマ一コマが、まったく違う体験に変わります。
次にミステリアスアイランドを訪れるときは、エリアに入った瞬間から「ここはネモ船長の秘密研究基地だ」という意識で歩いてみてください。壁のNマーク、クルーへの挨拶、書斎の資料——すべてがひとつの巨大な物語の一部として見えてきます。



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